最終章 愛しき友よ 前編










半袖で来ればよかった。

日射しが照り、少し暑い。

まだ梅雨にも入っていないが、今日は夏の訪れを感じさせる暑さだった。





「サヤ、お前が好きだったミルクティー持ってきたぞ。」


そう呟くと、墓前にペットボトルを置いた。

サヤのお墓に来たのは初めてだ。


行こうにも行けなかった。

何て言えば良いのか。
何てサヤに言えば良いのか。


ひとまず手を合わせ目を閉じた。


きっとここに来るのは今日が最初で最後になるだろう。










「やっぱりショウ君だ。」


ふいに背後から声をかけられ振り向くと、ナガツカが立っていた。



「びっくりした。」


「何?ひょっとしてお花持ってきてないの?」


「いや、多分既に誰かが持ってきた花があるだろうと思ってたから、持ってこなかった。

そしたらちょっと枯れてるから焦ってたところ。」


「サヤはお花好きだったから今日は色んな種類持ってきたよ。」




まさかナガツカとここで会うとは思わなかった。




「タマダはいないのか?」


「今日は独身最後の1日だから、お互いに家族と一緒に過ごそうって決めてたんだ。

この後お父さんとお母さんと妹とご飯食べに行く予定。」


「その前にサヤのお墓参りって感じか。」


「・・・・うん・・・」




ナガツカはしんみりとした表情を浮かべた。

ここで泣かれても困るんだが。




「ミルクティー持ってきてたんだ。
サヤ好きだったもんね。」


「これ高校ん時、学校の自販機が売り切れだからって、サヤがすげー落ち込むから、
外出てめっちゃ探し回ったよ。」


「そんなこともあったね。アハハ。

夏休みの補習途中で抜け出してタマダと一緒に行ってたね。

汗だくで2人がそれ持って帰ってきて、サヤすごい感動してたもん。」


「10年経ってもまだ残ってるこのミルクティーもすげーな。」