「あ……」


莉菜が携帯に手を伸ばすよりも早く、それを手に取ったのは俺だった。


画面に表示される着信の文字。





『相良』





――もう、その文字しか頭に入らなかった。


「ちょっ…おに……んんっ」


携帯を置いて、そのまま莉菜の両手をベッドに縫い付けて唇を押し当てる。


均衡は崩れた。

左側。


俺の望まぬ方向へ。


……だって、こんなの俺のせいじゃないだろ。

嫉妬で頭がおかしくなる。



「待って、やめっ…いやっ」


一度はその声で止めたはずの同じ行為。

もう止められない。


止まらない。

相良のモノだけにはしたくない。


―――嘘。

他の男だって、多分現れたらもう許せない。


俺のモノにならないならば、壊れてしまえばいい。


いっそ、消えてしまうくらい。