「中2の時ね、お兄ちゃん寝ぼけて私にキスをしたことがあるの。
机の上で寝てたから起こそうとしたら、トロけるような熱い目でね、ゆっくり目を閉じて唇に触れてきた。
私は、その時からお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃない」
「……なに、いってんだよ…」
ハハ、と乾いた笑いが出た。
なんで今更、そんなこというんだ。
なんで、今なんだ。
「ごめんね。
お兄ちゃんのキスは沢山の人が知ってるし、そんなこと分かってる。
…好きになると、そのコと口きかなくなるんでしょ?
だから…」
「だから、その時告白しなかったのかよ」
自分が考えているよりもずっと低い声が出た。
もう聞きたくなかった。
過去の話なんか。
