「今日さー、遊ぶはずの女の子がキャンセルになってイライラしてたんだよなー。
んで、オマエは彼氏?
羨ましくなって苛めた。
いや、なんか頭おかしくなった?
ごめんなー」


俺らしくもない。

ベラベラと言い訳を捲し立てて、今更元に戻ろうとしてる。

今もまだ、胸元の開いたワイシャツを剥ぎ取ってしまいたいのに。

そのまま、啼かせたいのに。


ごめんね。

俺はオマエの前で心から人に戻ることはできない。

無論、兄にも。



茫然、としていた莉菜はやがてぐっと唇を噛んだ。


……あぁ、失敗。

当たり前か。

キスまでしたんだ。



俺も同時に唇を噛んだ瞬間だった。



「お兄ちゃん、最低っ!!」


罵倒とともにぐっとワイシャツを引かれる。

そのまま俺の唇に落ちてきたのは、もう二度と触れることができないはずの柔らかさだった。