「んんっ…ちょっと」

「口開けてよ」


なんど噛みついても絶対にあけない唇をワイシャツの裾から手を差し込み素肌をくすぐることで、ムリヤリ開かせた。


甘い、熱い舌を初めて絡める。

こんな行為には十分慣れているはずなのに、身体が燃えるように熱かった。


莉菜の舌は勿論逃げ惑うけど、俺からは逃げられない。

ガッチリと固定した後頭部。

俺からはもう離れられない。

どうせ、もうこれで終わるんだ、なにもかも。


「んっ…、ふ、おにい……んんっ」

「しゃべんな」


絡めた舌は思っていたよりもずっと柔らかかった。

泣きそうになるほど、手放せないほど愛おしくて、焼き付くような他人のモノだった。


ゆっくりと背中のエプロンのひもをほどき、床に落とす。

ビクッと揺れた莉菜はさっきよりも強い抵抗を始めた。


ムリだよ、もう。



―――逃がさない。