「でもさー、もうアレも他の男の子のものだよねー」

「ハハ、なんだっけ、あの一年。
イケメンのくせにお調子者なアイツだろ?
えーと…、相良?
あいつ生意気にもあんないいもの手にしてたのか」


アサミと翼の会話が予期していたモノと違う方向へ向かう。

会話の意味がよくつかめなくて、

「なんのこと…?」

と尋ねる。


……でも、声が震えた。

イヤな予感がしたから。



「っえ……!
オマエ知らないの!?
兄なのに!」

「いやいや兄だから知らないんでしょー。
莉菜ちゃんね、カレシできたらしいよ」


コソッと耳打ちしてくるアサミ。

地獄に落とされたみたいに目の前が暗くなった。


「相良って言ってね、ソイツがもうイイヤツなんだけどさー。
なんかめっちゃ言いふらしてんの!!
もう笑っちゃって。
超有名だったのよー。
でも兄にはさすがに言いにくかったのかなー?」


アサミの高い笑い声が遠くに聞こえた。