手持ち花火を振り回しはしゃぐヒロを見て倫子も浴衣を振り乱しながら花火を楽しんでいた。
「あっママ見て~はなびやってる~」

花火大会の帰りと思われる母親と5歳ぐらいの男の子が歩いてきた。
「ダメよカズくん。お兄ちゃん達迷惑でしょ」
「いいんですよ。じゃあ一緒にやろうか。コレ持って♪」

男の子の後ろに回り、花火に火をつけると一気に火花を上げ始める。
「うわぁ♪ママ見て見て~」
「キレイだねぇ」

「ほら、カズくん見て~2本持ち~」
「あ~お兄ちゃんズルい‼僕もやる~」

二人して騒いでる様子を見て倫子は静かに微笑んでいた。
やがて男の子との花火も終わる頃、母親は倫子の隣に座った。
「あの子、父親がいないんです」
「えっ!?」

「恥ずかしながら離婚してしまって……あんなに笑うあの子久しぶりに見たわ。ごめんなさいねあなたにこんな話……あなた達は離婚はしない方がいいわよ」
「そんなっ!離婚どころかまだ付き合っても……」

「あら、そうだったの♪あまりにもお似合いだったからつい夫婦かと……」
「夫婦……そう思ってもらえると嬉しいです」
「彼、きっといいパパになると思うわ。さてと……カズくん、そろそろ帰ろうか」
「うん♪お兄ちゃん、お姉ちゃんバイバイ」

「バイバ~イ♪」
「バイバイ♪」

親子を見送って再び二人で花火をし始めた。
「三島くん子供好きなの?」
「うん。子供は無邪気で可愛いし好きだよ」
「そっか♪そういえばさっきのお母さんに私達夫婦と間違われちゃった」
「俺と倫子が夫婦か?」
「そうだよね~」

少し寂しそうな顔を一瞬見せた倫子だったがすぐに笑顔に戻し、その後花火を楽しんだ。
「楽しかったな。そろそろ帰ろうか」
「うん。今日はありがとう。すっごく楽しかった」
「帰り送るよ」