昼過ぎ、バタバタと動き回るマコトの姿を見かけたヒロ。浴衣を着た従業員も見えたため、動き回っているとすぐ察知した。

そんな中、一人の女性がヒロに近づいてきた。
「三島くん!」
「倫子(リンコ)……どうした?マコトから逃げて来たのか?」

近づいてきたのはパート従業員の倫子。ヒロと同い年の24歳。整った顔立ちと長い髪の毛はアップでまとめピンクの浴衣を着ていた。

「うん。この浴衣、今年買ったやつだから真っ先に三島くんに見せたくて♪どう?」
「すっごく綺麗だよ♪髪もいつもと違う雰囲気で良いね。わざわざ見せに来てくれてありがと 」
「やった。じゃあまたあとでね~」

ーー浴衣も悪くないかもな。日が暮れて花火大会のスタートを合図するかのように一発の打ち上げ花火が上がる。

「マコト、店も暇になるだろう。タバコ吸いに行くか?」
「あぁ♪」

喫煙所でタバコに火をつけたヒロは、窓から外を覗きこんだ。
「よく見える」
「しっかしどいつもこいつも浴衣着てリア充ばかりで参るぜ」

「そうだな♪今日はどこも人で溢れかえってる……おとなしく帰るか」
「あぁ。ちくしょ~来年は彼女作って店なんか休んで花火に行ってやる‼」

「まぁ頑張れよ。さて、残りの仕事片付けて帰ろう」
吸い殻を投げ捨て仕事へと戻って行った。

………………
…………
……
ヒロが持ち場に戻ると……
「倫子」
「三島くん♪あのね……今日終わったら時間ある?」

「ん?特にないけど」
「良かったぁじゃあ空けといてね。私もそろそろ上がりだから♪」

「あぁ分かった」


午後9時、店の前でタバコを吸っているヒロ。そこに、浴衣のまま現れた倫子。
「お待たせ~♪」
「あれ?着替えなかったんだ」

「うん♪三島くんに誉められた浴衣着てたかったんだ。お腹すいたね~ご飯食べに行こうか」
「あぁ」

「花火終わっちゃったね……」
「そうだ、飯食ったら花火やらない?コンビニで買い込んで近くの公園でさ」
「やる~♪何か夏っぽいね」