遠回りの恋

店に戻った倫子が目にしたのは、復旧作業に追われる従業員の姿だった。

「店長…………」
「戻ったか。ヒロはどうだった?」

「今朝目は覚ましました。でも……………………うっ…………うぅ……うわぁぁあ!!」
「どうした…………」
「記憶が…………無いんです。私が分からなくて……それに自分の名前も……」
「記憶喪失!?」

従業員全員が手を止め、泣いている倫子を見つめる。

「き……記憶って戻るんだろ?まずはヒロの無事が分かっただけでも良かったと思おう」
「分からないんです……」

「明日、ヒロの所に行ってくる。店はもう明日にでも開けられるが、ヒロとマコトが居なきゃな。あいつらの元気な姿をお客さんに見せないとダメだ……」

「その通りだ。店長…………ちょっといいかな?」
「しゃ……社長!?」

全国約100店舗を束ねる社長自ら店に出向いてきていた。
思わぬ展開に全員時が止まったように動かなかった。

「大変だったな。ニュースで見ていて本当はすぐに駆けつけたかった。わが社の為に若い二人が戦ってくれて……私からこれから先の事を伝える。」
「はいっ!!」

「ヒロ、マコト両名復帰まで店は凍結。大規模な改装工事に入らせる。その間従業員は長期休暇を与える。各々事件の傷を癒してくれ。給与に関しては心配しなくていい。全額支給を今朝の役員会で全員一致で承認された」
「寛大な措置、大変感謝いたします」

社長は笑顔を見せ、言葉を続けた。
「よく頑張ったな。感謝は私だってしたい。店を守ってくれてありがとう。英雄のヒロ、マコトに一目会いたいんだ。案内を頼めるかい?お嬢さん」

泣いていた倫子に近づきそっとハンカチを渡した。
「ありがとうございます……すぐに準備します」