「…二人とも、泊めてるんですか?」

「う、うん。というか、酔いつぶれた感じだけど。」

それがなんなんだろう?

「あ、荷物、どうぞ。」

遠藤君が袋をおもむろに差し出してくる。

「あ、ありがとう…」

受け取る瞬間、遠藤君がぐいっと、腕をひっぱった。

「ひゃっ!」

バランスを崩して身体が前につんのめる、その耳元にー

「気をつけないと。無防備すぎ。」

そっと囁かれて、肩を支えて体勢を整えてくれると、すぐに離れて行ってしまった。

顔も見えなかった。

私は呆然と後ろ姿を見送るしかなかった。

「なに、いまの。」

呟く声が、秋のはじまりの朝に消え失せた。