私の名前は中島皐月。
どこにでもいる普通の高校2年生。
両親は私が幼い頃に離婚して、それから私はずっとお母さんと2人で暮らしてきた。お世辞にも裕福な生活とは言えなかったけど、お母さんは忙しいのにいつも笑顔で、時間を作っては私と一緒に遊んでくれた。だから寂しいと思ったことは無かったし、お母さんが幸せになれるなら再婚だって大賛成。今まで苦労してきた分、自分の幸せを掴んでほしい。

うん、再婚すること自体は賛成するし、応援するんだけど……

「いくら何でも急すぎない?私、何にも聞かされてないんだけど……。」

「言おう言おうと思ってたんだけど、皐月が夏休みに入ってからの方がいいかなって思ったのよ。この間まで期末試験でバタバタしてたでしょ?」

「それは……そうだけどっ」

確かに、今回の期末試験は範囲が広い上にレポートの提出期限も重なって忙しかったのは事実。だけどそんな重要な話があるならいくらでも時間を割いたのに……!

そんな私の心境を知ってか知らずか、お母さんは笑顔で私の肩を叩いた。

「戸惑う気持ちは分かるわ。だけど、相手の方はとっても良い人だから大丈夫よ。皐月と同い年の息子さんもいらっしゃるらしいから、きっとすぐに打ち解けられるわ。」

「えっ、向こうにも子供がいるの?しかも息子?!」

「そうよ。写真でしか見たことないけど、かっこいい子だったわよ。」

楽しそうに言うお母さんとは対照的に、私の心はずるずると沈んでいく。

「どうしよう……新しいお父さんだけじゃなく、兄妹ができるなんて……!心の準備が……」

「息子さんは誕生日が7月だから皐月の方が妹ね。お母さん、男の子も欲しかったから嬉しいわ〜」

呑気なことを言うお母さんに何を言っても無駄だと思った私は、大きな不安を感じながら部屋に戻った。

その不安の正体を知るのは、もう少し先の話。