そんなのいらない。【完】

『聞いた話になるけど…』


コーヒーをすする私をチラッと見て公平が話し出した。


『ヒロトと理恵が別れた時さ…ヒロト大分悩んでたんだよ。』


「…?」


『理恵との付き合いも長いし、それなりに将来見据えた仕事見つけて結婚してぇってのがアイツの口癖だった。』


懐かしい口調で話す公平。

『でも、アイツ結構頑張り屋だし照れくさかったんか、理恵にはまだ言えねぇって。固定の会社決まるまでプロポーズはしねぇって、頑張って就活してたんだよ。』


公平がタバコをくわえた。


『とりあえず、金も貯めたいからってアイツ派遣の仕事で夜間警備のバイト始めたんだよ。昼間は就活。夜は警備のバイト。』



「え?そんなの、聞いてない…」


-カチン-
-シュボッ-

公平がジッポを取り出してタバコに火をつけた。