「だって夏だよ。子供じゃないって思わせるチャンスじゃない?」

「チャンスというか。塔子の気持ちなんて知ってるでしょ?」

「知っててあの態度なんだよ!まったく相手にされてない」

「5つ上だっけ?」

翠は思い出すように、天井を見上げた。
そんな翠を見ながらあたしも移動教室の教科書を持って、実験室へと重い足取りで歩き出した。

「うん大学4年。卒業したらもうチャンスないもん」

「そっか。就職しちゃうんだ。そしたら大人の女がたくさんいるもんね」

ニヤニヤして言う翠を軽く睨むとペロッと舌を出した翠と目が合った。

「そうだよ。ただでさえ今でもモテるのに」