ぼんやりと窓の外から校庭を見ていると、不意に声を掛けられて私は声の方をゆっくりと見上げた。
「塔子、次移動だよ、ぼーっとしてどうした?また大ちゃん?」
「何よそれ。私がいつも大ちゃんばっかりだと思わないでよ」
「それ以外にあるの?」

ニヤリと笑って私を見るのは中学からの友達で今も変わらず親友の長田翠。
長い真っ黒の髪に、切れ長の真っ黒な瞳は日本の美少女と言った容姿だ。

それに対し、私、片桐塔子は色素の薄めの肩より少し長い髪。瞳もブラウン。身長は161㎝とごく普通。決して器量が悪いという事もないが、特に際立ってキレイという事もない。

久しぶりに同じクラスになった翠と高校2年の夏を迎えようとしていた。