「あそこだ!」

「早く捕まえるんだ!!」

「ワン!ワオーン!!」

森の中には狐を狩りにきた複数の人間と2匹の犬がいた。

「「・・・人間は怖い。
お父さんもお母さんも、みんな人間に殺された。
どうして・・・。どうしてひどいことをするの・・・?
もう、ダメ・・・。痛い・・・。苦しい・・・。
おとう・・さん・・。おか・・あ・・さん・・・。」」

狐のミンはその場で倒れた。足と胸に刺さった矢がミンの体を支配する。
ズキズキと痛む体では歩くこともできなかった。

「おい!!大丈夫か!?」

突然ミンの体はふわりと抱きかかえられた。

「「な・・に・・・?」」

やっとの思いで重たい瞼を開けるとそこには一人の青年がいた。

「「に・・人間!?
やだ、やだ、やだぁぁぁぁぁぁ」」

青年の腕から解き放たれようと必死にもがき、青年の手に嚙みついた。

「いっ・・・。ごめんね。怖い思いしたよね・・・。
でも、俺はお前をこれ以上傷つけたくないんだ。だから頼む。暴れないでくれ。」

「「なんで、なんで、こいつは必死なの・・・?」」

無理をしたせいか余計体は痛みを増していった。ミンはこれ以上暴れることができなかった。
嚙みついたところからは、血が流れてきていた。

「そう、大丈夫。いい子だね。」

青年はミンに話しかけながら、丁寧に手当てをしていった。

「「あ、少し楽になった・・・。」」

「本当にごめんな。痛い思いさせて・・・。ちょっとの間俺の家においで。」

「「こいつが私を傷つけたわけじゃないのに謝るなんて・・・。
・・・優しい人間もいるんだ。」」

人間の優しさに触れた事がないからか心が温かくなったような気がした。
青年に抱きかかえられながら、森を静かに後にした。