「ママが泣いてたの…パパ見て泣いてたの…スズね、かほちゃんまってたの」 「…そっか」 ギュと抱きつく鈴音を持ち上げたまま、静香さんが待っている病室へと足を向ける。 502号室の部屋の前に立ち、『広瀬正樹』と掲げられた名前を見てノックして静かに入るとそこには目を疑う光景。 白いベットの上で静かに眠っているお兄ちゃん。 その横では静香さんが嗚咽を漏らしながら泣いていた。