「笑わねえよ」
窓の外に目を向けて闇に染まるその姿がなんだか儚げに見えた。
「夏帆嬢、俺ら手伝うから産めよな?」
優しく笑うその姿がお兄ちゃんと被って、生きてたらそう言ってくれるのかなって想像しちゃった。
「なんでそんなに優しくしてくれるんですか?」
素朴な疑問だったと思う。
「俺ら母親はクソだと思ってるから。だから俺らのようになって欲しくないから、その子はちゃんと育てて欲しいだけ」
庵治さんが放ったその言葉で場が重たくなった。
「俺らだってヤクザになりたくてなったわけじゃないんだ。家系とか色々事情があるやつが闇に染まるんだ。」
それはわかっているつもりだった。
いや、私は何一つわかっていなかったんだ。
龍太さんや庵治さん、先輩の心にある闇さえも。
「一人が嫌なら俺らを頼って。その子、ちゃんと育てよう」
その一言で決心がついた。
溢れ出す涙を優しく受け止めてくれる人たちが私の周りにいた事。
そして、私自身が受け止めるようにならなきゃいけないこと。
「私産みます」
産むことを決心した私にはもう迷いなんてなかった。
ただ一つー…