「…は、はぁ」
「組長がいきなり夏帆嬢の所行くとか言い出した挙句、夏帆嬢探せとか無茶ばっかり」
困っちゃう、そう言って眉をハの字にして微笑む庵治さんになんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんなさい」
「分かればよろしい。ところで夏帆嬢…」
ジロジロと周りの視線が痛い気がして背後を振り向くとー…
「ひっ!!」
喉の奥がヒュと音を立てて悪寒が走った。
鬼の形相で仁王立ちをして本棚にもたれかかっている姿さえ絵になってしまうほどの美貌の持ち主。
「…龍太さん」
鋭い視線を私に向け、ダルそうに近寄ってくる龍太さん。
声が出なかった。
あまりの眼光の鋭さや龍太さんが放つオーラが凄すぎて、何も言えなかった。
「行くぞ」
私の真横をすり抜けて出口の方へ向かって歩く龍太さんの後を庵治さんは、
「夏帆嬢、早くおいで」
そう言って早足に出入り口へ歩いて行った。
言われた通り、私も出入り口へと足を進め外に出ると出入り口に横付けされた一台の高級車。


