大嫌いなあなた


初めて聞いた大吾の過去。

お母さんいなかったんだ。

「俺、今お前にその言葉返すよ。“俺ら”がついてるから。話せよ全部」

「………」

「ヤス、夏帆。俺も花もお前らの事大好きなんだよ、本気で大切なんだよ…」

ねえ、安浦。

私達きっと世界一幸せ者だよ。

「…あぁ」

安浦の頰から一筋の涙が伝った。

「…大ちゃん、ありがと」

「へへ」

嬉しそうに鼻を擦る大吾は笑っていた。

「花もありがとう」

「…遅いっつうの」

涙を拭ってあげる安浦は誰よりも優男で、笑って許す花ちゃんはどこまでも寛大な女だった。