「ただいまー」
先ほどの事を頭の隅にやり、家へ帰るとカレーのいい匂いが玄関にまで浸透していた。
「おかえり夏帆。手洗っといで」
「うんっ」
言われた通りに洗面台へ行き手を洗ってリビングへ向かった。
リビングに着くと綺麗にお皿に盛られたサラダに美味しそうなカレー。
「お兄ちゃん何で家にいるの?」
「…たまにはな」
お茶を注いでくれる私の兄、正樹。
年は私の10個上、27歳で妻子持ち。
早くに親を亡くした私にとってお兄ちゃんは親代わりだった。
親が残した旅館の経営をしているお兄ちゃんは毎日多忙だ。
なのに時間を見つけては妻に尽くして子供に尽くして私に尽くす。
休んでくれてもいいのに、と心では思ってるけどやっぱり寂しい気持ちもある。