「早く行け」

「へいへーい」

渋々だる気に私に背を向けて歩いていく安浦は多分龍太さんの事嫌いじゃない。

多分龍太さんも安浦の事嫌いじゃないってことは接している態度でなんとなくわかる。

複雑な家庭でも兄弟は仲悪くはないんだね。

なによりなにより。

「おい」

思わずびっくりするようなドスの効いた声を出した龍太さんをそっと見た。

「行くぞ」

そう言って歩き出した龍太さんの背中を必死に追いかけた。