完璧秘書の可愛い弱点

ふぅ、と息を吐いて時計を見る

まだ、8時なのか...

いつもは9時半あたりになるのだがな...

藤堂の様子はどうだろうか?

少しでも良い方向に向かってると良いのだが...

...そうだ、早く返らなければ

約束したからな。約束は守るぞ

や、約束、だから、な...!

頭の中で約束、約束と繰り返しながら藤堂が待つ家に向かう

家に着いたところで気付いてしまった

俺、藤堂の家の鍵持ってねぇな

藤堂、起きてると良いんだが

俺は起きてることに賭け、チャイムを鳴らした

...

反応がねぇ...

一応もう一度、鳴らしてみる

待つこと5分、目の前の扉が開いた

『あ...しゃ、零さん、お帰りなさい...』

半開きの目と、ゆったりした声からして今まで寝ていたのだろう

「悪いな、起こしてしまったな」

『全然大丈夫です。さ、中に入らないと零さんまで風邪を引きます』

「ああ、すまない」

『零さん』

「なんだ?」

『私はこうして看病してもらうだけでもう、充分ですから』

「だが俺は...」

『私...看病されたこと、無いんです』

「は?どういうことだ?」

『そのままの意味です。どんなときも、一人でした』

「親、は?」

『お仕事です』

そう言う藤堂の目は、少し哀愁を漂わせていた

だから俺は、

「...今度からは、俺が看病する」

こんなことを言ってしまったのだろうか...

『...ふふっ、そんなに私はやわじゃないですよ。でも...』

藤堂はこちらを真っ直ぐ見つめると...

『ありがとうございます』

そう言って、微笑んだ

それを見て、やっぱり俺は藤堂が好きだな、と実感した

そんな俺には、気づけなかった

そう微笑んだ藤堂の瞳に、うっすら涙が浮かんでいたことに

気づけていたら、何か変わっていたかもしれない

そう後悔するのは、少し後のこと