熱が高すぎるせいか、なんとなく息が苦しくて、大きく深呼吸する。
「はぁ……。ん、寒い…」
布団を肩の上までかぶる。
ほんとに寒いよ。布団から出てる顔が冷たい……。
…ヒカリちゃん、どうしてるのかな。ちゃんと病院に着いたのかな?
っていうか、どうして病院に戻ってきたの…?あんなに戻りたくないって言ってたのに。
なんだかすごくヒカリちゃんのことが気になって、頭から離れなくなった。
すごく頭痛いし、体がだるのに…ヒカリちゃんの事が気になって。
…大丈夫かな。
頭がぼーっとしてて、何も深く考えずに、気がついたら、ベッドから起き上がっていた。
フラフラする体になんとか立ち上がると、病室のドアを開けた。
めちゃくちゃ寒い……
廊下に出ようとすると、目の前がくらんで、しゃがみこんでしまった。
目の前がチカチカして、頭が痛い。
「ちょっ…桜?!」
その声がした瞬間、抱き上げられたと思ったら、亮樹兄ちゃんだった。
「桜…絶対安静にって言ったでしょ…」
困った顔であたしを見る亮樹兄ちゃん。
「…ヒカリちゃんのとこ行きたい。だめ…?」
「ねぇねぇ、桜、自分の体温何度だと思ってる?」
「…大丈夫。」
亮樹兄ちゃんはふぅと苦笑いすると、あたしをベッドの上に下ろした。隣に亮樹兄ちゃんも座る。
「39度近いの。外に出て、感染したら困るでしょ?もっと苦しくなるよ?」
んー…でも…
熱が高いせいか、思考が回らなくなって…。そうなると、ただ感情や思ったことだけが口から出てくる。
あたしは首を振る。
「やだ…けど、ヒカリちゃんの所行けないのも嫌だ…」
「さーくーら、ヒカリちゃんは大丈夫だよ?ちゃんと病院にいるって言ったでしょ?」
けど……カッターが…持ってたし…。きっと、病院に持ち込んでる。いつ、何するかわからないんだよ?
だから……
「やだ、行きたい。あたし大丈夫だから…」
「桜。いい加減にしな?勝手に部活出て、病院も抜け出して、また自分の体のこと考えないで無理しようとするの?
これ以上、わがままいったら、本当に知らないよ?」
……。
今まで、苦笑いしながらあたしに言い聞かせてた亮樹兄ちゃんが、こわばって、声も低くなった。
「…ん、だって…」
ヒカリちゃん、カッター持ってる…何するか分からないんだもん…手遅れになってからじゃ…
「だって、ヒカリちゃんが死んじゃったらっ…!」
なんだかわからないけど、高熱もあってか、ポロッと涙が出てきて、亮樹兄ちゃんに寄りかかった。
ふぅと息をついて、優しく背中を撫でる亮樹兄ちゃん。
「…わかった。俺がヒカリちゃんの様子見てくるから。だから、桜はちゃんとここで寝てるんだよ?」
あたしは、うなずくと、亮樹兄ちゃんの白衣の裾をギュッと掴んだ。
「…桜、体熱い。ねぇ、もう1回熱はかってみよ?絶対上がってる気がする…」
亮樹兄ちゃんは胸ポケットから体温計を出すと、あたしの服の中に入れようとした。
「やだぁっ」
絶対熱上がってる、わかってるから、測りたくない…
「こーら、ダメ。」
抵抗するあたしを膝の上に乗せると、固定されて体温計を入れられた。
逃げ出したいけど、男の亮樹兄ちゃんと、高熱のあたしの力の差なんて目に見えていて…
「はぁはぁ……ゴホッ…」
「あーほら、咳出てきちゃった。」