よし、そろそろ病院に連れていかなきゃな。


熱も高いし、結構しんどそう。


そう思い、桜に上着をきせ、毛布も持って、車に乗せようとしたとき。


玄関を出たら、誰かが横切った。目の前の道を。



…どこかでみたことあるような。



「っ……はぁ……」


苦しそうな声が聞こえて、俺は思わず道へ出た。


うずくまるような人影が見えて、俺は桜を車の後部座席へ寝かすと、その人のそばに行った。



「大丈夫ですか…?どこか具合が……え?」


ひ、ヒカリちゃん……


肩で大きく息をしていて、髪は乱れていているけれど、確かにヒカリちゃんだった。


ヒカリちゃんは俺を見ると、また立ち上がろうとする。

「ちょっと待って。」



俺は腕を掴むと、ヒカリちゃんは首を振った。


「大丈夫ですっ……大丈夫ですから…」


顔をしかめながらそう言うが、額は汗びっしょりだった。


「大丈夫そうに見えないよ…?
ヒカリちゃん病院から抜け出したんでしょ…?」


そう言うと、びっくりしてこちらを見るヒカリちゃん。



「あ…桜ちゃんの……」


何かを思い出したように、体をかたまらせて、再び走り出そうとする。


「ダメだよ。体がしんどそうだよ?病院に戻ろうよ。佑真先生も心配……」


「大丈夫です、誰も心配なんかしてないから…」



そううつむくヒカリちゃんの顔はどこか悲しげな感じだった。



「…ヒカリちゃん、行こう?このままじゃ倒れちゃうよ…」


しばらく沈黙が続くと、ヒカリちゃんが口を開けた。



「…桜ちゃんは?」


「…桜?が、どうしたの?」



「桜ちゃん、大丈夫…?」



俺をじっと見つめてくる。


ヒカリちゃんに手招きすると、車のドアを開けた。


「倒れてるところ見かけて、家が近かったから今から行くところだよ。」



ヒカリちゃんは桜を見て、気まずそうに視線を逸らした。


桜は後部座席に横になって、ぐったりとして荒い息をしている。


「……桜さ、ヒカリちゃんのこと心配してたよ?」


「…そう、なんですか…」


俯いて、拳をぎゅっと握りしめてる。


「それは、俺も、佑真先生も同じ。みんな心配してるんだよ?だからさ…戻らない?一緒に。」



優しく言ってみると、ヒカリちゃんは少しだけうなずいた。


そして、また桜を見つめる。


「ふふ、桜なら大丈夫だよ。心配しないでね。」



「私です…」


蚊の鳴くような声で言う。


「私が、桜ちゃんを連れてきたんです。私が外に出たかったから…桜ちゃんは、悪くありません……」


…そういうことか。

ヒカリちゃんと出て行ったってことは予想してたけど…。

どうしてヒカリちゃんはそんなに病院に居たくないんだろう。


色んな疑問が浮かぶが、とりあえず今は病院に向かうのが先だ。


「そうだったんだね。大丈夫。二人とも無事でよかったよ。

…とりあえず、病院に戻ろっか?」



コクリとうなずいた。