寂しい時や、しんどい時って、なぜか甘えたくなる。



…わかってる。わがままだって。亮樹兄ちゃんにこんなこと言って、困らせるだけだって。


けど、限界だったの。しんどかったの。



「…そうだよね。桜にとって、ここはいたくない場所だよね。

けどね、今の桜の体の状態でお家に返すわけに行かないんだよ。桜ね、今こうやって話してるけど、本当はすごく熱あるし、しんどいはずだよ?

それだけ、体が弱ってるの。だから、返してもまた倒れちゃうからね。

だから、もうすこしここにいてほし…」



「ごめんなさい。」



思わず、つぶやいてた。

きっと、本当の心の声だった。

わかってる。病院にいなきゃいけないことも。こうなった原因もあたしだってことも。




「っ…亮樹兄ちゃん、ごめんねっ…困らせて…迷惑かけて。」


泣きだしそうなところを、必死でこらえたら、震えた声になった。


「ごめんなさい。わかってるの。わかってるけど…っ

わがまま、言って…、亮樹兄ちゃん困らせてる。

あたしね、1番迷惑かけたくない人は亮樹兄ちゃんなの。なのにっ…あたし、甘えてわがままばっかり…」



あたしは亮樹兄ちゃんに、抱きついた。


亮樹兄ちゃんはそっと背中をトントンと叩く。


「…桜、いいんだよ?甘えて。」


優しい声だった。


「俺は、桜が優しくて、人の気持ち考えられて、素直でいい子だってわかってるよ?
だからね、迷惑かけてもいいの。わがまま言ってもいいよ?

俺は桜とずっと一緒にいたんだから。
友達や他の人に遠慮はしても、俺だけはそういうの一切いらないよ?」


言い聞かせるように、あたしの頭を撫でながらいう亮樹兄ちゃん。


その言葉を聞いて、余計に涙が出てきた。


亮樹兄ちゃんっ…ごめん…ありがとう…

その言葉だけが、ぐるぐるまわった。




亮樹兄ちゃんはそんなあたしに微笑んだ。



「あのね桜。たしかに、今の桜は色んな人に支えられてるね?学校でも病院でも。
なんでだと思う?」


…なんで?

「…あたしが病気だから…」


亮樹兄ちゃんはふふっと笑うと、首を振った。


「そんな理由だけじゃない。
…桜が、桜だからだよ。」


亮樹兄ちゃんの言ったことがよくわからなくて、首を傾げる。