亮樹兄ちゃんは、料理の手を止めると、あたしの前に来た。




ソファーに座ってるあたしの前に膝立ちする。




「桜は大丈夫って思ってるかもしれないけど、体が悲鳴をあげるよ?

まだ病み上がりなんだし。

そうしたら、また体がきつくなっちゃって、落ち込むのは桜なんだから…」





「そう言うことばっかり言わないでよ!

あたしが大丈夫って言ってるから、大丈夫なの!

亮樹兄ちゃんが決めないでよ!」





悔しかった。

ずっとそう。やりたくても、できない。

ふつつの生活がしたくても、できない。



それが嫌で、苦しかった。



亮樹兄ちゃんは、しばらく黙ると、ふぅとため息をついた。


そのため息は、なんだか冷たくて。




「…俺は、桜がきつくなるってわかってて言ってるの。

自分の体調のこと、管理をちゃんとわかってないと、やらせるわけにいかないよ。」





…なんでよ。そんなことっ…





「きつくならない!勝手に決めないでよ!

体調管理だって、ちゃんとしてる!

体が言うこと聞かないんだもん!こんな体、嫌いだもん!」




思ったままに叫んだ。


なんでだろう。なんでこんなことを言ってしまったのか、わからない。





「…桜。」




なんだか、涙が目に溜まってきて、こぼさないように必死だった。




「桜、出来てない。わかってないよ、まだ。

学校始まったばっかりだから、体調崩すのはしかたないよ?

けど、部活やりだしたら、きつくなるってわかってるでしょ?

なのにやるって言うんだから、自分の体調のこと、わかってないでしょ。」