言葉が、うまく出なかった。
だから、ゆっくりうなずいた。
あたしも、産んでくれた家族が、記憶をたどっても、わからない。
顔も見たことがない。
そして、今は亮樹兄ちゃんの所にいる。
…似てる、かも。
だからかな、2人がヒカリちゃんに会ってくれって言うのは。
急に、思い出してきた。
あたしに、本当の家族がいなかった時のこと。
施設にいた時のこと。
寂しくて、心細くて。
周りの大人が信じられなくて…
いつも、何かに怯えてた。
誰かに優しくされても、信じられなくて、他人にイライラをぶつけてた時もあった。
…そっか。
心臓のあたりが、ドキリと痛んだ。
「亮樹兄ちゃん、あたし、役に立つか分からないけど、
出来ることをするから!」
すると、亮樹兄ちゃんが微笑んだ。
「ありがとう、桜。」