別に特段秀でた部分はない。

 どちらかというと、下手の分類に入る。

 なのに、私の心はどういう訳か鷲掴みされてしまったのだ。


 私は夢遊病患者の如く、旋律に誘われるように足を運ぶ。進むにつれて、音がどんどん大きくなる。


 立ち止まったのは、音楽室の前。
 音はここから聞こえる。


 私は扉に耳を欹てながら、音色を楽しむ。
 時折、音が途切れる事がある。音が外れて、訳が分からなくなる事も。


 だけど、一生懸命で、真っ直ぐな音色が印象的。