プロローグ

凍てつく冷たさの強風が、全身に襲いかかる。

何度も書き直したグシャグシャの手紙は、ゴミ箱に山積み状態だ。

半分開かれた窓から吹き付けてきた強風でごみ箱は倒れてしまい、床に散らばってしまった。

彼女は"手紙"に集中させていた手を止め、椅子から立ち上がった。

小さく…でもイメージとしては重々しい巨大な岩石のような、深い苦痛の溜息を吐き出した。

一回で書きたかったのに…ダメだったわ。

何時間たったかなんて分からない。

時間の感覚は完全に消えていたのだ。

テーブルの上に置かれたデジタル時計を手に取ると、もう五時間近い経過。

外はどんよりと暗く、見ているだけでも憂鬱になるほどの曇り空だ。

まるで私自身を表してるみたいね。

彼女は苦笑した。

とても醜く、呼吸をするのもやっとだなんて…。

やがてタンスの中からごみ袋を取り出すと、機械のようにごみくず達を袋の中へ押し込んだ。

袋の口をしばってドア付近に乱暴に投げ込むと、彼女は再び力なく椅子へ座り込む。

「後2ページだわ。もう失敗は出来ない」

そうよ。失敗は出来ないの。

これは"大切なこと"を伝えられる、数少ない手段なのだから。

小刻みに震える手にボールペンを握らせると、再び紙にペンを走らせる。

私を痛め付け、苦しめ、いかにも道端の小石のように軽々しく扱われる存在…。

あいつらのおろかな行いの全容を、全て書きしめてやるって言うことを‼

こちらに意思などない。

否定する権利すら与えられないのだ!

"お前は人ではなく家畜同然だ"と笑われて、ぼろ布のように私を…私を…‼

バンッ‼‼

拳を怒りで丸め、テーブルを強く叩いた。

そんなの絶対に許さない。 遺書はただとか

私は家畜じゃなくて、人間よ‼‼

怒りに任せて全てを書いた後、白い封筒に手紙を四つ織りにしてのり付けしたら、ふうとうの表側に「遺書」と描く。

まさか私も、こんなことを描くはめになるのなんて。。

これでわたしも、終焉を迎えるのね。。
さらにパワーアップ.,