「好きな人、って……いるの……?」



 ついに明日から夏休みが始まろうとしているこの時期。


 いつものように二人で下校していると、唐突に彩がそう言った。



 「……は?」



 驚いて、思わず間抜けな声が出る。


 振り返ると、慌てたような顔をした彩と目が合った。



 「えっ、と、あの……」


 「……あ俺、好きな人……」



 彩が口を閉じる。


 それに甘えて、俺は口を開いた。



 「……いるよ」



 何でこの時、言ってしまったのだろう。