ピース

 抱き締める力が強くなったと思うと、ふっ、と千裕が私から離れた。


 自然と、向き合う形になる。



 「お前こそ、相手はどこにいんだよ。しかも、ここ、毎年2人で花火見てる場所じゃねーか……」


 「今はっ、屋台の方に買いに行ってくれてるんだよ! ほら、もうすぐ帰ってきちゃうし、誤解されちゃう……!」


 言いながら、目から涙が溢れる。


 目の前で千裕が短く溜め息をついた。


 「……ごめんなさいっ。千裕に言ったこと全部……うそなの。千裕こそ、好きな子は……?」


 「俺だって……あんなの、うそだよ……」 



 __ドンッ……! パラパラ……



 静かになったその一瞬。


 花火の音が、やけに大きく聞こえて。


 オレンジ色の光に照らされ、千裕の顔がはっきりと見えた。