匡side




「沼田、立てるか?」




だいぶ体調は良くなったらしいけど、まだ少しよろけていてぼーっとしてる部分があった。









「ありがとうございます、先生」









沼田ってあまり笑わないやつなのかな、そんなに関わったことは無かったが見かけると、無表情なときがあった。











「じゃあ、佐伯先生、沼田さんをよろしくお願いします。」






朝イチに保健の先生に見送られ、俺と沼田は空港までタクシーで行った。







時々様子を伺ったが、大丈夫ですのひとことで返事するから本当に大丈夫なのかよ、と思ったが







苦しそうな様子はないし、気づけば飛行機に搭乗して空港まで帰ってきていた。








学校から自分の車で空港まで来たから帰りもそれに乗って帰る。










沼田を助手席に乗せ、車を発進させようとした時…







「先生、気分が悪いです」




と沼田は涙目で訴えた。







俺は急に体調をまた崩したのか、と冷たい飲み物と、市販の薬を買いに行こうと近くの薬局を探すために「ちょっと待ってて」と車を降りようとした。









その時、「待って…置いてかないでっ」



そう言って沼田は俺の腕をつかみ、そして









抱きしめられた。













突然の展開に頭が混乱する。





「…沼田さん?」





さん付けになってた。











「先生、好きなの!先生のこと。


ずっと好きだったの!1年の頃から…」







そう言って沼田は俺のことを強く抱きしめるが、俺はその腕を離すように言った。










「沼田、気持ちはありがたいけど、でもその気持ちには応えられない。ごめん、俺なんかおっさんだし、もっといいやつが沼田の周りにいるだろ?」








俺よりいいやつはいっぱいいるよ、そう言ったが下を向いたっきり返事がない。









「体調は…平気なのか?」








ちょっとすると沼田は落ち着いたようで「はい」
と返事する。













ごめん、沼田







俺には竹内だけなんだ。