いつものように慣れた手つきで身支度をする。
元から二重の目にビューラーを当ててまつげを上げて、黒い長い髪はアイロンで寝癖を伸ばしてゆく。
仕上げに軽くピンクの色付きリップをぬり
父の写真に手を合わせて学校へ向かう、
「まだ火曜日かー。はあ、眠いしだるいー」
「雪美おはよー!!!」
「綾奈おはよーっ今日も元気だね笑」
「元気に決まってるよ!まだ火曜日!まだ4日も秋夜君に会えるんだもん!!っ」
少し茶色く染めたミディアムヘヤーに剃るのを失敗したであろう眉毛は綺麗に形よく書かれた、少し不良もどきなこの子は私の同じクラスの友達の百木彩奈。
隣のクラスの秋夜くんって人に恋をしている。
「あー、この前言ってたあのテニス部の?」
「そうそう!!今日の放課後、西春高校のテニス部の人たちと一緒に練習するらしの!雪美一緒に着いてきてっっ」
隣に並んで歩いてたのを急に私の前に回り込み、かわいい子猫みたいな上目遣いで
おねだりポーズをする綾奈。
元々顔が整ってて可愛い彩奈からこんなふうに頼まれたなら、世の男は皆縦返事だろう。
と、毎回彩奈から頼まれごとをされるたびに思う。
西春高校はテニスが強い高校で有名で
うちの学校はたまに西春高校に教えてもらいに行っている。
そこで目に付いた生徒は推薦で受験に受かったりするのは近年では珍しくない話。
「えーなんで私も行くのよー、テニス分かんないし行ってもつまんない!」
「西春高校の近くに新しくカフェが出来てそこのパフェが美味しいらしいの!パフェ奢りでどう?」
「その話乗った!」
「よしゃー!雪見は食べ物に弱いからなー笑」
「うるさいなー笑」
綾奈は私の家の事情を知っている。
でも綾奈は一度も同情とか、親が居ないから
とかゆう理由で特別扱いなんかせず
普通に自然に接してくれた。
心から信頼できる友達は私にとって綾奈だけって言っても嘘じゃないかも。
