奏でるものは 〜功介〜



駅に行くために国道から曲がって更に曲がるT字路。

既に花が幾つか、歩道の端に置いてあるのを見て、胃がうねった。



「……ここだよ」



なんで……ここなんだ?


「ほら、供えてやれよ。あ、花代は割り勘な」

お腹に押し付けられた小さめのブーケを受け取った。

そっと花を置いて、目を閉じた。




怖かっただろ?寂しくなかったか?


……なんでここなんだ? 




聞きたいことがあるのに、もう、聞けないんだな。


ぐっと、唇を噛んだ。


歩こうと、体の向きを変えると、昌が言った。



「花、持っていけよ、通行の邪魔になるだろ?
山に、持っていって、自然に返そう」



言われるがまま、供えた花を取った。