奏でるものは 〜功介〜




「生きていくことは、変わっていくこと?」


ミリが呟いた。


「ああ、変わっていくこと。
それが生きてるってこと。

あの時のままの彼女を俺は忘れないし、ミリも彼を忘れなくていい。

思い出して一人になりたくなったら、一人になったらいい、邪魔はしない。
それでも、俺はミリのそばにいるよ」


「……功介さんの結婚の条件は?」


「仕事の邪魔をしないこと、浮気をしないこと。

それから………彼女の墓参りには……行かせてほしい」



涙がまた1つミリの頬を伝った。



「彼女を、ずっと思ってるの?」


「思ってるけど、忘れないけど、俺は生きてるから。

生きてる人の中では、ミリが1番、会いたい女だよ」