奏でるものは 〜功介〜



「俺と結婚しても、ソイツが現れたら、ソイツと結婚するのか?」


ミリが目をそらせた。


「………もう、私の前には現れないわ。

化けてでも出てきてほしいのに………」


「それって……」


一瞬、眉を寄せて目を閉じたミリが、目を開けて俺を見た。


「学生のときにね。病気だったのよ、気づいた時には手遅れで、あっという間だった。

両親は知らないの。


でも、私は、まだ世界一愛してるって彼に言える」


涙が彼女の頬を一筋伝った。



彼女は、俺とは違って弱っていく愛する人をみていたのか。

絶望を味わったのか。


「頑張ったんだな」


思わず、彼女の髪を撫でていた。