カオリちゃんと優の姿が見えなくなり、大きくため息をついた。
カオリちゃんに聞いた話が、思考停止させていた。
まだ、それについて話したくなかった。
「もう一度、唯歌のとこに行くけど、お前らどうする?」
二人に聞いた。
「あぁ、行くよ」
と、3人で立ち上がった。
誰も喋らず無言で唯歌の墓の前にならんだ。
昌が腰に巻いていたウエストポーチを探って、線香とライターを出した。
「持ってきてたんだ」
龍が言うと、常識だよ、と屈んでロウソクに火を点けながら昌が言う。
線香を3本ずつ渡された。
「なんで3本?」
「俺の家の宗派では、3本だから」
真面目にしてるらしいが、あまり意味が分からず、龍と顔を見合わせた。
先にいけよ、と背中を押されてロウソクから線香に火を移して線香を立てた。
手を合わせて、すぐに立ち上がって場所を譲った。
「行けよ、俺にもそのくらいの常識はあるから」
と龍が昌に譲っていた。
その様子をチラッと見て、唯歌の墓の横に並んでいる大きな、唯歌の墓より古い墓石の墓を見た。
サイタグループ本家の墓なのだろう。
なら、唯歌の家は分家?次男の家か。
なあ、唯歌、お前の体の一部がここにあるんだな。
抱き締めてやれないけど、会いに来れたよ。
魂がホントにあるのか知らないけど、魂があったとして、どこかに行ってるとしても、お前の体が眠ってるここに、また来るよ。
それは、俺の自己満足なのかもしれないけどな。
目が潤むのがわかるが、フと、口元が緩んだ。
自己満足に見えても、俺が、来たいからな。
「ここにいたのか」
「優も、ほらよ」
昌が優に線香を渡すと少し驚きながら、受け取っていた。
「持ってきてたのか。3本、なのか?」
優以外の3人で笑った。
「常識なんだってよ」
龍が言うと優が不思議そうな顔をして、墓に向った。

