奏でるものは 〜功介〜




広場の隅で立ち止まって振り返った。



「あの日、お姉ちゃんのそばに行ったら、私をみて言ったの。家族への言葉のあと

『……すけ、しあわせ、に……』って。


すけ、がつく名前の人なんて、分からなくて、付き合ってた人がいることも知らなくて、探せなくて、今日まで伝えられなかった。




お姉ちゃんは、最後にあなたのことを、あなたの幸せを……考えたんだよ?」


涙が溢れた。



立っていられなくて、カオリちゃんの肩に手を置いて、自分の腕に顔を埋めた。


最後に、俺のことを……?

唯歌こそ、悔しかったんじゃないのか?

俺に腹をたててるんじゃないのか?



なんで、俺の幸せを?





温かい手が、背中に当てられた。