私は黙って耳をすませる。

『あー、やっと出たぁ。

今日の飲み会、駿也さんがいないからつまんないんですけどぉ』

電話の向こうからはガヤガヤした音とともに、女性の甘い声が聞こえてくる。

これは、完全に仕事の電話ではない。

次に電話から何が聞こえてくるのか、ハラハラしながらただ待つ。

『桃は今から別の場所に飲みに行くんですけどぉ、山道さんも来ませんかー?』

な…!

なんなのこの人。
駿くんのことを狙ってるの?

この時間から飲みに誘うっていうのは、それはもう…。

駄目じゃん!

思わず駿くんの方に顔をあげると、おもいっきり目が合った。