「駿くんが酔っ払って家に帰ってきたことがあったんだけどね。

ふらっふらで、そのままソファーにダイブしたの。
ぼーって目を開けて、でもちゃんと見えてんのか見えてないのかわからない感じで私をじっと見てるの。

どうしたのかなって思って、私も黙ってたら、なんかしゅんとした顔をしだして…。

真綾が同年代の男の所に行ってしまわないか心配って言い出すの。

それがもう、意外すぎて。
去るもの追わずって言葉が似合う人だし。
私たちの関係を、どこか客観的に見てるのかなって思ってた。
そこを大人だなって感じる時もあったしね。


けど、そうじゃなかった。
ちゃんと当事者として私との関係性の中にいてくれてた。
大人なんだけど、親しみみたいなのを持てるようになったかな。

…と、そういうことなどがありまして結婚に至りました」

そこまで話して急に照れたのか、改まる。

「そう、ですか」

だから俺まで背筋を伸ばしてしまった。

それにしても、酔っ払って帰った家に真綾がいるなんて。
それをあいつが独り占めしてるなんて。

そんなことが許されていいのかよ！
くそっ！

でも足掻いたところで、俺の入り込む余地はどこにも見当たらない。