「はっ、ははっ。
別にお前と張り合おうなんて思ってねーよ。

真綾のことは、ただの幼馴染みとしか思ってないから!」

俺は人生で何回この嘘をつけばいいんだろう。

同級生にからかわれたら嘘をつき、俺に好意を向けてくれる女子に真綾との関係を聞かれて嘘をつき。

大抵信じてくれないけど。

「あぁ、そうですか。

気まぐれで、これ以上に真綾との距離を詰めようなんてことは、しないでくださいね」

それだけ言うと背を向けた。

もう終わり?
戻るのか?

なんだ。
案外あっさり引くんだな。

思ってたよりもチョロいんじゃねーか、この男。

「もしかして、ほっとしてます?」

ギクッ。

背中を向けられたままでも感じる緊張。

「いや…」

思わず答えに詰まる。

すると、くるっとこちらに向き直った。

その表情は、怖いくらいに笑顔だった。