〜3時間後〜


「ねぇーなー」


「うん…」


女の子は目に涙をため、今にもこぼれそうになる。


「あーっ!泣くな泣くなっ!」


子供ってすぐ泣くからやだよ・・・。


「なっ、なっあ〜・・・どーしてそんなにクマのぬいぐるみが大切なんだ?」


俺は泣かさないために女の子に聞いた。
すると、女の子は下を向きながら答えた。


「わたしね・・・思い出せないの。・・・でも大切な人にもらったの・・・」


大切な・・・人・・・。
その言葉が胸に染みてくる。


「大切な人なのに・・・思い出せないのか?」


「うん・・・わたしね・・・車にひかれて、ちょっと記憶をなくしたんだって・・・誰かに助けられたんだけど、その人を思い出せないの。ママはクマをくれた人だって言っていた。」


「へぇ〜・・・命の恩人にもらったぬいぐるみか。それで、その人はどうなったの?」


その言葉になにも答えず、ただ静かに首を横に振った。
その意味が伝わり、なにも言えなくなった。

落ち込む女の子を見て
ほっといておけない気持ちになった。


「探すかっ!くまっ!」


ぱっと女の子に笑いかけた。
どうしても見つけたくなったのだ。
女の子もその笑顔につられて笑った。


*‐*‐*‐*‐*‐*‐*‐*


日が落ちる頃、草むらの中から
ベージュ色のものが見えた。



「おっ!あったぞっ!」

「本当!?」



女の子が草村からひっぱり出すと、涙を浮かべて大切そうに抱きしめる。


「これだよ!お兄ちゃん!ありがとうっ!」


女の子はにこっと涙をこぼしながら言った。
つられて笑い、ぬいぐるみに目を向けると、見覚えのあるものだった。