相変わらず高過ぎる松ヶ原邸の門を抜ければ、今日も蛍が出迎えてくれた。

「来ると思った」

テラスから聞こえた声に目を向ければ、昨日と同様リクライニングチェアに座った喪服姿の彼女がいた。

あぁ、名前聞いてないんだ俺。
そこで気づいた事実に何してんだって自分に呆れ返る。

「ども」
「今晩は。どうぞ」

そう促されるまま、テーブルを挟んだ隣の椅子に腰を下ろす。

「何か、飲みますか?」
「いや、今日は酔えないから」

そう答えればクスクス彼女は笑う。