──キーンコーンカーンコーン…
昼休み終了のチャイムが鳴る。
「…教室行ける?」
雨音の中、あおが気まずそうに口を開く。
「ごめん、先教室行ってていーよ。りほ、あとから行くから」
「…」
涙を拭いて、笑顔で。
「泣き跡、みんなに見られたくないから!」
あたしも、授業はさすがにサボれない。
行かなくちゃいけないけど、泣き跡は…。
そんなあたしのわがままに、あおを付き合わせたくない。
「…わかった」
あたしの気持ちを読んでくれたのか、あおは校舎に向かって行った。
やばい、そろそろ5時間目始まる…。
教室、行かなきゃ。
…ずぶ濡れ。どうしよう、先生に絶対なんか言われる。
あたしは、雨粒が体から滴り落ちるまま、教室に入った。
「先生、さっき水溜まりが見えなくて、走って転んだらこうなりました」
我ながら無理やりな言い訳だったけど、先生はなんとか納得してくれた。
あおの席を見ると、あおはあんなに濡れたのに乾いていたから、タオルで拭いたりしてなんとかしたんだなと思う。
先生にタオルを貰って席につくと、隣から声がかけられる。
「最近、りほとあお、よくいなくなるけど何してんの?」
ひかる…。
「んーとね、委員会あるの!忙しいんだよね、笑」
「…オレ、なんかしたっけ?」
「え?ひかるが?りほに?」
「うん」
あたしに?なんにもしてないよ、ほんとに。
「してないよ」
「じゃあなんでオレのこと避けてんの?」
「…!避けてないよ、いつも通り」
はづきに協力してるから、あたしはあんまりひかると喋れないなんて。
そんなこと言えるわけがない。
「絶対避けてるよね?なんで?」
「避けてないってばー」
これの繰り返し。
何回か同じ会話を重ねた頃、後ろの席から助け船が出てきた。
「ほんとにオレとりほ委員会行ってきたよ。一通り終わったから、また明日から一緒にいれるわー」
あお?明日からもいれないよ。
だって、はづきが…。
「あーそっかー。よかった」
ひかるはそう言って笑う。
ひかるの笑い顔なんて、かっこよくないわけがなくて…。
久しぶりにひかるの顔を直視する。
かっこよすぎて、やばい。
これ以上顔を合わせてると無理だと思って、あたしは机に顔を伏せた。
