キミがくれた勇気。

【乃愛side】

タッタッタッタ…
ヤバイヤバイ!もう、予鈴鳴っちゃうよ!ここを曲がればもう音楽室…な、はず。

————ドンッッッ。
「わっ⁈」
何なに⁈
…何かにぶつかった?人…。誰?

慌てて、その人の顔を見る。

…待って待って待って‼︎
嘘でしょ⁈⁈⁈

その人は、この学校の番長と呼ばれる、2年の桜庭 隆生(さくらばりゅうき)だったのです…。
「おい。」
さっ、殺気ぃぃぃぃ⁉︎怖いよ…。
「すっ、すみません!」
「あん?お前、俺のタチ知ってんのか?」
「ば、番長ですよね…。」
「わかってんじゃねーか。気ぃつけて歩け!気分悪ぃ。」
はわわわ…オーラがすごいです、番長さん!これ、私大変なことしちゃいましたよね?
「本当にすみません…。」
私は立ち去ろうとする。すると、番長さんは私の腕を引っ張る。ビクッと肩が震える。
「おい、これいらねーの?」
「あっ…。」
だっ、伊達メガネ…。落としちゃったのか。
これはかけて帰らないと、お母さんに怒られちゃう!
「なぁ、いらねーの?」
「ひっ、必要です…。」
「なんで?これ、度、入ってねーじゃん。てか、お前、メガネない方が可愛いぞ。」
かっ⁈可愛いって言われた…⁈聞き間違い…ですよね?
「えと、事情がありまして、」
「まあいい。お前、放課後、2年E組の教室来い。」
「な、んでですか…。」
「あ?来ねーなら、これ、返してやんねーけど?」
そっ、それは困る…
「分かり、ました…。」
「じゃ、待ってる。」
入学早々、すごいことをしてしまいましたよ…。


私は、江川 乃愛、高校1年生。どこにでも居るような、ごく普通のJKです。

恋愛経験なし、彼氏いない歴=年齢。
中学生のころから、高校生になったら、甘い甘い恋ができて、彼氏もできて、友達がたっくさんできて、オシャレをいっぱいして、少しばかり夜遊びだってして…。
中学生にはできない夢を、抱えきれないほど持っていた。

…でも、高校生活は、イメージとは違った。
私がなんとなくで入った高校は、ごく普通の学校。
…ちょっと訂正。…ほとんどの人がごく普通の高校だった。
…1部がヤンキー…とかう不良がいるけど、それ以外はどこにでもいるような高校生ばかり。私のような、地味な子だって、派手でオシャレな子だっている。地味地味っていつもみんなに言われてますよ。可愛いキラキラ系の子に。こんなんじゃ、恋なんて一生できないじゃん!
…悩みはそれだけではなく、お母さんが「変な男の子に絡まれないようにっ!」って言って、
伊達メガネ&膝丈スカートで、オシャレとは程遠い女の子になってしまいまして、お友達は五人くらいしかできていません。あー!青春したい!とか考えておりますよ。

…で、なぜさっきのようなことになってしまったかというと…
私たちのクラスは、四時間目が音楽でした。そして、音楽室に筆箱を忘れてきてしまった私は、先生に鍵を借り、お昼休みに、取りに行こうとしてたんですが、すぐにお昼休みは終わってしまうので、とっても急いでたんですよ。…そこでぶつかってしまったのが、番長さん。って訳。
はい、運が悪いです…。


「嘘⁈マジで言ってんの?」
「うん…」
この子は、月島沙由里。一番仲の良い友達です。この子に、今朝のことを話し、ました。
「ガンバッ!今日さゆ、委員会あんだよね。まぁ、あっても無くても、一人で行かなきゃ意味ないと思うよ?」
「うわー。どうしよ。大変なことしちゃったよね。」
「そうだね…。」
ん?…なんか、周りがざわついてるような…。
「ね、さゆちゃん、なんかいつもよりザワザワしてない?」
「その理由は、乃愛だね、きっと。」
「え?なんで?」
な、に?ほんと分かんない…。
「乃愛がメガネ外したら…超可愛いから。」
「お、お世辞なんていらないからっ!」
「お世辞じゃなく!ほんと可愛い。」
「なっ…!」
「授業始めるぞー。…お前、江川か⁈」
「はい、そうですけど?」
「ほら!」
嘘つき!いつもいつも地味ってバカにするくせに、メガネ外したくらいでなによ!
まぁ…、それはともかく、番長さんのところに、行かなきゃならないんだよ、ね…。また、あんな殺気を放たれたら…怖すぎて震えちゃうよ。

✩。* *。✩

結局…来て、しまった…。
私の目の前には、《2-E》と書かれたプレート。賑やかな話し声がする。そこで、どうすることもできなくて、おどおどしていると…
「あら、いらっしゃあーい。よく来れましたねー。」
「あっ、こん、にちは…」
バカにしたように言う番長さんが教室からでてきた。後ろには、友達…?だと思われる…人が数人。…やっぱり威圧はすごい。
「ほら、ついて来て。」
「どっ、どこに行くんですか
「ん?秘密。」
え、なんかさっきとは違う雰囲気。少し…少し、甘い感じ。
連れて行かれることを、もちろん断ることはできず。そそくさと歩く、番長さん率いるグループに、一人でついて行った。
「ここ、入れ。」
たどり着いたのは…プレートになにも書かれていない教室。最初から何も書いてないようなのじゃなくて、無理やり文字を消したような跡がある。
「えと…ここ、どこですか?」
「俺らの秘密の部屋。」
''秘密の部屋''…か。
怖いのか、ワクワクするのか、分からない。…でも、今はそんな感情じゃない。多分。
''怖い''じゃない。かといって、''ドキドキ、ワクワク''でもない。''嫌な予感''、と言ったほうが正しいであろう。
…そして、その予感は、見事に的中した。
「なぁ、お前、俺の遊び相手になれ。」
「ふぇ?」
意味が、分からなかった。全然。何を言っているのかが、分からなかった。彼は、動揺する私に対して、
「俺の彼女になれって話。」
と、冷淡に答えた。
………あっ、遊び相手っ⁈彼女っ⁈はぁあああああー⁈
「どっ、どういうことですか⁈」
「俺、お前が気に入ったわ。俺にぶつかったくせに、土下座もしないんだもん。」
「どっ⁈」
土下座⁈そんなに高い地位なんですか⁈
「名前は?」
「え、江川乃愛、です。」
「ふーん。意外に可愛い名前じゃん。じゃ、乃愛、これからよろしくー。」
乃愛⁈展開が早すぎて、内容が掴めてないんですけど!
「えと、え、と、…」
「ぷあっはははは!」
動揺が隠せない私を見て、いやらしげに笑う番長さん。ある意味怖いですよ?
「私は、何をすれば…いいんですか?」
「んー。彼女らしいこと?」
「なんで私が?」
「あれ、俺にぶつかったのに、罪滅ぼしを断るの?」
イジワルに言う番長さん。あーぁ。すごいことに巻き込まれちゃったよ…。
「あ、あの、私は番長さんに何をすれば…?」
「んー、まずは、毎日一緒に帰ろーぜ。あと、番長さんて呼ぶな。隆生って呼べ。」
「は、い…」
「じゃ、帰るか。」
緊張するぅ……。そこで、なぜか番長さん…じゃなかった、り、隆生、先輩の友達さんは去って行った。
…も、しかして、二人で帰るの⁈
「あぁっ!」
そうだ、そうだ!忘れてた!
「なんだよ、ビックリすんだろ。何?」
「メガネ…返していただけませんか?」
メガネかけてなきゃ、お母さんに何を言われるか…。
「ん?いいよ。でもさ、」
————グシャっ。
「はぁああああーっ⁈」
隆生先輩が踏んづけた、私のメガネは、派手に音を立てて潰れてしまった。
「これ、壊したら返してあげるってね。俺、今の乃愛のが可愛くて好き。」
「はわわわわわ…」
さっ、さらっとすごいこと言いますよね、隆生先輩は!
「テキトーに理由付けとけ。もう伊達メガネなんてかけてくんなよ!」
「テキトーにって…」
「帰んぞ。」
「はい、」

お母さんには…
『うっかり落としたメガネを先輩が踏んでしまって、先生にもこの機会だから度が入ってないならメガネなんてかけない方がいいよ』って言われたって''テキトーに''言い訳しました。
『先生までが言うなら…ね…』
と、お母さんも納得してくれた。
それにしても、遊び相手で彼女って、どうかと思うけどね。乗り切るしかないよ、隆生先輩にぶつかっちゃったのは私が完全に悪いんだもん。
…忙しい毎日になりそう。