島からの上陸許可を待っている間、暇になった私はこれから2年間暮らすことになる、このホーリーヘルス島のことをもう一度調べてみた。あらかじめ持ち込んでおいた雑誌をあさっていくと、ある記者がまとめた島についての特集を見つけた。

 ”太平洋のど真ん中に浮かぶ小さな島、ホーリーヘルス島。
 この島は全体で一つの医療施設になっていて島の半分が病棟、もう半分がリハビリ用の小さな町らしい。この島に入った難病患者は、2年後には普通の人以上の健康体で帰ってくる。しかし、なぜか患者たちは島での2年間のことを忘れてしまうようだ。
 これは、いったいなぜなのか。ーーー”


 なんとも信じがたく、気が滅入る話だと思う。だが、実際にそういう人がたくさんいるというのだから、無理にでもそうなんだと頭にねじ込むしかない。ため息が出た。ちょうど船が島についたようだった。
 立ち上がり、船の下り場へと歩きだす。点滴についているキャスターのゴロゴロといった音が私を追いかけてくる。この耳障りな音とも、2年後にはおさらばできるのだ。そう、、あと2年、2年さえ我慢しさえすれば、私は、、普通になれるのだから。