「あれっ、お前……」


 頭上から声が降ってきて、おもむろに顔を上げて目を剥く。


 彼だ! 念じたら本当に会えた。


 喜びも一入だけど、すぐに萎んだ。
 久し振りに会ったあなたは不織布マスクで覆われていたから。


 アタシの困惑顔に察したのか、あなたはバツの悪そうに首裏を掻いた。


「お前のせいじゃないよ。俺の不注意だし。っていうか、捨てずに取っておいてくれたんだ。もうボロ傘だから、てっきり捨てたんだと」


 捨てられる訳ないじゃん。
 だって、これはあなたにもう一度会うための重要アイテムなんだから。


 その時、腹の虫が鳴った。嘘、折角会えたのに恥ずかし!
 と思ってたけど、彼の腹から聞こえる。


「腹減ったからさ、これからご飯にするか」


 まさかの食事のお誘い!
 喜んで承諾すると、ボロ傘と称した傘があなたの手に渡る。


 今日の天気は、雲の一つない晴天。
 だけど、あなたはアタシが傘を気に入ったと察したらしく、隣で差してくれる。


 何だか、まるで相合傘みたいだ。