その時、雨が降っていたの。バケツがひっくり返したと言ってもいい、土砂降り。傘を持ってないアタシは一瞬でずぶ濡れになった。


 寒かった、とっても。ガチガチ、身体の震えが止まらなくて凍えてしまいそうだったの。


 もう、ダメかもしれない。
 そんな不安に駆られた時、あなたが通り掛かった。


 アタシと目が合うと、あなたは不思議そうな顔をしてアタシを見た。
 ずぶ濡れだったアタシをからかう気なんじゃないかって、その時はひどく警戒心を露わにした。


 けど、あなたは目を三日月みたいに細めて微笑んだ。

 何? 何で笑ってるの?
 訝しげな表情で見つめると、あなたは差していた傘を傾け、アタシの頭上に掲げた。