私は可愛くないオンナだ。

そんなことは私が一番よく分かっていて
今更変えられないことだって
私が一番よく分かっている。




母親はいつもこう言っていた。

「奏、あなたは強くありなさい。
いつでもどんな時でもまっすぐ前を向いて
背筋を伸ばして立っていなさい。」


そしていつも必ずこう続けた。


「……私は泣き虫だったからね。
甘えっぱなしでどうしようも無くてね。
それがお父さんには重荷だったのかしらね。」



父親が出ていってから女手一つで育ててくれた母。
自分の失敗を繰り返して欲しくない、と
いつも私に同じ言葉で繰り返し言い聞かせた。

そんな言葉を聞いて育った私だが
精神的に強くなった訳でもなく、

ただ、笑顔で隠す技を日々磨いていくだけだった。



これこそが強さであると信じて、
笑顔という仮面で取り繕うことで
私の中で生まれる醜い感情を押し殺した。