「私はケソ生徒でいられないのですね……。もう。何も特別でない」

「大丈夫、マセタ生徒は嫌いじゃない。積極的な方が大成すると思っている。がんばって欲しい」

 やっぱり、マセテ見えるんだ。
 十二歳だからかな。
 考えてみれば、十六歳からしか結婚できない。
 私は、早いんだ。
 おマセさんか……。

「でも、俺のパートナーは、彼女だけなんだ」

「グッド、ベター、ベストと同じ……。クソ、ケソ、コソか?」

 神谷先生は、指折り、示した。

『コソ恋』

 私の胸の中をこの言葉がよぎる。
 これは、私への言葉じゃない。
 私は、神谷先生にとっての最愛のパートナーではなかったんだ。
 彼女を見てから、何となくは分かっていた。

「最上級の恋人だ」
 神谷先生は、彼女の横顔を見る。

「今度、彼女は、神谷になる」

 彼女が、お辞儀をした。
 名前は、知りたくもなかったので、忘れた。
 百合さんとか、そんな感じがニアミス。

「君は、先生からみたら、生徒なんだよ。いくら特別でも」

 私の恋は、片想い。
 密やかに想い続けるの。

 こそっとね……。

 これが、私の『コソ恋』……。


 心深くに押し込める。

 私から笑顔がすうっと消えて行った。




 『コソ恋』。






Fin